拳風(チェンフェン)

この間の講習会にさまざまな武術家武道家が参加していたので、話しをブルースリーお得意の寸勁( one inch punch) に絞って one inch punch  と尤氏長寿養生功の zero inch punch という 私が創作した相手に突かせて、その時同時に発勁する技を参加者に披露した。腹を突かせて、腹の皮筋肉を柔らかく、でもパーンと張って相手を吹っ飛ばすワザである。あまりに武術的なワザで、未熟な者は見ただけでは理解出来ずに、あまりに簡単に吹っ飛んでしまうので、すぐに、未熟者は、俺にそんなことは通用するはずはない!俺にやってみろよ、このやろう、といきり立つので今まで公開して来なかったが、私の指導員にもそろそろ見せる、そして、講習会の動画にも、尤氏意拳が及びも出来ぬワザを見せてみようとの心が動いたので zero inch punch  と共に披露したのであった。私の修行時代にこんな出来事があった。私がジャンプを始めてから少し経って、師母が思い切り突いて来い!と私に言うので師母の正中線に拳を固めて突いていくと、何遍やっても、「不好、不好」のダメ押しだった。何ヶ月か何年かしてその修行は続いていたのであったが、私の脚力が相当について来たある日、いつものように正中線に向かって無駄と思われる突きを繰り出して見たところ、師母が師母が「不好」と言わずに「プーツァオ」と言った。私は意味がわからない。通訳を通すと、悪くないという意味であった。続けて「お前の拳には拳風がある。」と言ったのであった。この頃は師母も我々若い元気な者が現れたので、武術家としての心が動かされて、刺激されてそんな場面となったのであろう。私はとても喜び、感動した。百五十年前の先人達の仲間に入れたのではないかと。それ以降、私の修行はますます激しさを増して続けられた。私は毎日通った。雨の日も風の日も、クリスマスも祝日も、サンフランシスコに地震があった日も、訓練に明け暮れた。チョット待て、さすがに、地震の日は、私がキャンピングカーをサンフランシスコに持って来ていたので何日でもサンフランシスコに泊まっていられると思って、道場に行くと、師母が出て来て、私の顔を見て、「今日はもう帰れ。」と師母が言うので、すごすご帰宅したのであった。師母と私が訓練しなかったのは、この日が初めてだったと思う。この拳風という言葉には中国の武術の歴史と幅の広さ、連綿と続く師弟関係の心と技の繋がりを私は感じて日本のものと違う中国武術の風格をいつも感じるのである。