線香も焚かず屁もこかず
私は1972年から2014年までアメリカに在住していた。2015年についに、遺骨となった妻と共に日本に帰国した。私がこれまでに関わった人間は数多い。その中には、私を利用しようとした者も多い。経済的に利用しようとした。そうでもないのに、どうも私がお金を一杯持って悠々自適に生活しているように見えるらしい。私の履いている靴や身なりを見れば一目瞭然の筈だが、カネを欲しがる者の目は少し見えなくなるようだ。こんな者がいた。
大学を何遍受けても、不合格する。
受験勉強で徹夜をしたことは見たことがない。食事に誘えば断ったことはない。
酒も飲む。受験セミナーを取れば、大学に受かると思っている。こんな浪人生活
を送って、大学に受かると思っているのだろうか?こんなことを私に言った。
自分は一個も悪くない、一個も悪いことはしたことはない。
そうである。何もしない。何もしたこともない。自分の人生の中で何もせずにジッと家に閉じこもり、勉強しないと
大学には受かるはずはない。私は苦々しく
この者の言うことを聴いた。イライラした。勤勉な態度姿勢も見せずにカネばかり欲しがる。良い人間を装う。
悪い人間でなければ、良い人間だから、カネを出せ、と示唆していた。
こんな浪人生はほんとにつまらない。アメリカではこんな万年学生は professional student と呼ばれる。毎日正規に働かなくても良い。良く見える。言い訳となる。本ばかり読んでいる。
夢がない。人生をこれから開く者が
こんなにも覇気がなく。カネばかり欲しがる。三十歳で短大に受かり、三十二歳で卒業するが、働かない。縁はすでに切れて、便りはない。私の知人が上手いことを言った。
こんな何もしない人間のことを
線香も焚かず屁もこかず、と言うんだと。
まったく同感である。