秋津の国と原風景

秋になるとトンボを見る。

日本は秋津の国と言われている。

以前にアメリカから日本の東北に来て、岩手の古い湯治場に行った。バスを

降りて空を見上げると、空が真っ赤だった。赤トンボの大群だ。見ながらジッと立っていると鼻の

頭にトンボが止まる。この光景を見て、

急に涙が出て泣いた。この光景は

私が子供の頃に見た同じシーンであった。

日本は東北に生まれて育ち故郷を捨てて

東京アメリカに移り地球の裏側、日本人が一人もいないところにも行った自分が

愚かに思えた。私の原風景は東北で、

全て私が気にいるものがあって、何を

あくせく達成しようとしていたのだろうと感慨無量に なった。誰にも原風景はある。しかし日本人の原風景は特別だ。

トンボは秋、稲につく害虫を食べる。

昔の日本人にはトンボは益虫で特別な昆虫であった。原風景が日本の自然である者は心が豊かになって、情に基づく

人間関係を保って人生を歩んで行けると

私には思われる。子供の頃に集めたホタルもトンボと一緒に風景として目を閉じると思い出す。日本の自然は他の国には無い、独特で繊細なものだ。ホタルもトンボもいなくなってきている。我々の

子孫がこの原風景を見ることが出来なくなるのは豊かな日本人の心を伝えて行けなくなることになる。勿体無い。

今ならまだ間に合うと思われる。

海外で生活してみて初めて分かることだが、私は日本に生まれて良かった、

日本人で良かった、また、東北に生まれて良かった。と考えるようになった。

日本は特別な国である。そしてその自然

も特別で、日本人の心も特別なもので、我々の子孫に未来永劫受け継がれて行く

べきものである。