追憶其の二

私の妻を追憶している。良い時も悪い時もずっと一緒であった。妻と会う前には私はコーヒーを飲まなかった。アメリカンコーヒーを飲むと胸やけがしたし、師母から白湯だけ飲めと言われたのである。でも、焼き芋が好きだった妻の為に午後のおやつに私はイモを焼いてコーヒーを入れた。しばらくして日課となって私はコーヒーを飲むようになった。

たくさんは飲めない。どうも罪の意識を感じてしまう。でもイモにコーヒーは合う。東洋と西洋のコラボとでも言おうか?絶妙のコンビネーションである。

一緒にしたことはイモとコーヒーだけではない。師母との修練も一緒、その後のみんなとの会食、妻の買い物、いつも

一日中一緒だった。飽きないですか?と聞かれたが、一緒にいて飽きることは無かった。話し上手で私を楽しませてくれた。私は話が下手で、話するのが苦手だった。なんにでも、造詣が深く、良く知っていた。私には勿体ない人であった。

たったひとつだけ妻に負けないものがあった。この氣功である。別に競争心があった訳ではないが、練習に行く前には車の中で心構えとジャンプや型の要諦を

説明した。そのせいか、ドンドン上達した。帰宅してからも、氣功談義は続く。

ある時は推手、ある時は氣でベッドまで飛ばした。落ちる所がベッドでは怪我しない。私の妻は友人であると共に同士でもあった。寂しくも懐かしい。