津軽の仙人

本州の最北にもう一人の仙人がいた。

津軽岩木山という山があって、白神山地に行った後にこの山の頂上まで登った際、この仙人は突然現れた。山菜料理の食堂を経営している。まるで熊のように真っ黒なヒゲを蓄えて、津軽弁で私に

話しかけるが、東北弁がわかると思っていた私にも早口で喋る津軽弁はチンプンカンプンであった。何を言っているのか

さっぱりわからない。通訳が必要である。やっと山菜を取りにここへ来たのか?と理解した。国民宿舎があって、

ちょうどその時は獅子座流星群が地球に近づいてたくさんの流星が夜空に見える時であった。宿舎の屋上に布団を引張って行って仰向けに寝て、一晩中1分に

一度の流星を見ていたのであった。

天体ショーである。空気のきれいな津軽の空は真っ暗な闇の夜に光のスジがスーッと現れて消えていく。幻想的な光景であった。話しを戻す。仙人は岩木山

春や秋の岩木山の山菜を採って自分の

食堂で山菜料理をこしらえて客にその味を自慢している仙人だった。食べたところ、熊のような雰囲気の割には、繊細な味で美味しかった。すぐ近くに温泉がある。もちろん湯に浸かり、登山の疲れを癒したのであった。東北の山にはあちこちに仙人がいるようだ。仙人コンテストを開催したら、どの仙人が優勝するであろうか?今でもそこに食堂があるかはわからない。何せ二十五年前の話である。