私の大家

二年前に移り住んだアパートは築三十年をとっくに超えたボロアパートであった。畳の部屋の畳は波打ち、私の悪い脚には危険な部屋である。リビングの床は木がめくれてつまずくと危ない。シャワーから出て壁の角の木の枠を掴むと外れてしまった。電気をオフオンにするところからはジーッと大きな音がして今にも発火しそうだ。そんな三年も五年も入居者がいない部屋に私は入居した。姉の冷たい視線の介護に愛想が尽きて自分の空間を持った私には天国だった。自由が手に入った。始めから大家の態度はおかしなものであった。私の質問には感情的になって、そっけない。チョット大きな音量でCDを聴くと玄関の鉄のドアが破れるほどに叩き、蹴飛ばす。明らかに私にイライラしているようである。来年二月に更新手続きをせよと管理会社から電話があり、私に私だけの家賃が一番低く安いのだと言う。やっと謎の大家の私に対する態度の理由が分かった。もっと家賃が欲しくて安く入れてしまった私にイライラをぶつけていたのだな、と理解した。しかも新しい家賃を二千円上げるというのだ。たった二千円でこのネズミ大家は私の精神衛生に悪い事を二年の間

していたのだなと思った。呆れたジジイ

だ。私を早く追い出してリフォームして家賃をもっと値上げしたいらしい。

こんな我利我利亡者のカネの亡者は

死に目が良くない。最も大切にする者とモノを失くして悲しみのドン底に突き落とされる。アメリカにもカネの亡者はたくさんいる。日本でまた亡者に出会ってしまった。良い感情はこの大家には持てない。私のように氣をとことんまで訓練した者には悪感情を持たれない方が良い。すでに私が糾弾したオトコは

人生のドン底に落ちている。カネの亡者のなれの果てが、悪因悪果となって

跳ね返ることになっている。