震脚

秋の夜の虫の清浄な音を聴きながら、尤氏長寿養生功の最大の秘密のひとつで、最大の特徴を説明しようと思う。震脚は太極拳にもある。太極拳に於いては、拳を固めて別の手のひらに打ち付けると同時に片足で床を踏みつける。名人がこれをすると体育館の窓ガラスがビリビリと音がして体育館が揺れてしまったと言う伝説がある。一方の尤氏長寿養生功では両足で震脚する。全身全霊で足を床に打ち付けるので、何回も震脚は出来ない。傍目に見るとジャンプをしているように見えるので、何もわからない者がこの震脚をするとオンナの子の縄跳びのような格好となり、実際、サンフランシスコの道場では、白人の女性は弱い震脚で満足していた。私が一度だけテレビ局のプレハブのビルで、ジャンプを見せてくださいとせがまれて、それではと、私の本格的な遠慮の無い震脚をして見せたら、三階建てのビル全体が爆撃されたような音を立てて揺れたので警備員が血相を変えて、駆け上がって来て、地震かと思いました。と言った。当時の私は相撲取り並みの、体重が九十五キロもあり、師母が私の太もも、大腿四頭筋を触りながら、驚いた顔をして、私の太ももをビシャッと思い切り叩いて、ニヤッと笑みを浮かべて、ドクター尤老師も太ももが驚くほど太かったけども脚の裏側には筋肉は全くなかったと聞かされた後のことである。太極拳の震脚を片足ですると何遍出来るか知らないが、尤氏長寿養生功の震脚は回数を多くは出来ない。それを私は修行で、 トータル七百二十万回の回数の震脚を敢行して私の脚力を作ったのであった。站椿功で培う氣と両足の震脚で鍛え上げられた身体は上虚下実となって、武術家の理想の究極の状態になり、勁空勁を使いこなせる身体となる。ちなみにこの震脚を以って人を踏みつけると、殺人も可能なチカラとなる。別に自慢をしている訳ではないが、そんなチカラを武術より健康長寿に応用した方が人類のために、仏法の為になると言うことがドクター尤老師の考えであった。私も東洋医学を学んで医師の端くれになった者である。強さと自己満足の武術武道を捨て去り、医術の道に進んだ私はより知的な東洋医学の分野で以前とは違う知的活動と満足感を味わっている。震脚を武術家武道家にさせてみると、要領と筋力がないので、何回も出来ないが、毎日訓練した私はジャンプを三十分しても耐えられる身体を作った。師母は私を訓練する時には、私がヘトヘトになるまで、立てなくなるまで、、私を離さなかった。他の者はたったの五分、私が三十分では、嫉妬されてイジメられるのは当たり前だろう。