勁の原理

世の中に生まれて、何遍考えても分からないことを全て解明することを死を迎えるまでに成し遂げれば、生まれてきた甲斐があるというものである。私は武術武道を半世紀にわたり携わって、チカラとワザを超える勁力について、是非とも習得してその全てを解明することに情熱を燃やして、今に至っている。分かったことを共有しよう。勁のチカラというものはただの一般に言う、力が強いと言う力とは違う。外家拳の突きが腕の力に頼る力は勁ではない。これまで解明した私の知識と経験では、勁は脚力が基本で、脚力を上半身や腕に伝えたチカラを勁と呼ぶ。つまり、エンコしたクルマを押して動かす時に使う身体の使い方であり、そのチカラを武術的な使うチカラを勁と呼ぶことになる。その武術的な使い方にはさまざまにあるだろう。日本の武術では、合気道で使うワザには勁がある。しかし、勁を習うシステムは確立しておらず, ワザを何年も何十年も訓練する中で自然に勁を使うことができるようになっているようだ。一方、中国武術では、脚腰の徹底的な鍛錬の方法はしっかり確立されており、脚力の養成が勁を使うベースになっていることをハッキリと理解している。明治の柔道家が大きな外国人を思い切り投げ飛ばしていた事実は日本人が当時、勁を使うことが出来ていたことの証明であると私は理解している。当時の日本人の日常の生活様式を考えると勁を使う準備、訓練を毎日していたことになる。現代での西洋式のライフスタイルでは、站椿功や基礎訓練でトレーニングしなければ、勁を使えるだけの脚力は鍛えられない。尤氏長寿養生功の修練をすると自然に脚力が出来て、勁を使えるようになる。もちろん、私が師母と過ごした年数と真剣な修行が必要である。私が一時期教えた者はたった一ヶ月で、尤氏長寿養生功の真髄を学んだ、と言っていたが、内家拳を知る者ならば、誰一人としてその言葉を信じる者はいないだろう。仮にも中国最強と言われた武術を私が教えた期間の一ヶ月でその真髄を習得出来る訳が無い。ウソで自分を飾りつけている。良く合気道の人間が講習会に来て私の勁で投げられ、空勁でコントロールされた後に不思議な顔をしているが、勁までが合気道の限界であるようだ。空勁は、勁をかけられて氣が身体を充分に巡るようになって出来る、触れずに相手を投げるワザであり、尤氏長寿養生功の独壇場である。我々のレベルの空勁は他には見たことは無い。勁が脚力をベースにするに対して空勁は瞑想で鍛えられた脳神経と氣がベースとなっている。空勁が出来ると勁を使うことは赤ん坊のレベルとなってしまう。空勁は武術武道の最高峰のワザと言える。空勁については、さらに多くの時間をかけて言わねばならない。またの機会としよう。勁と空勁は連続して繋がっている、とだけ言っておこう。もうひとつある。勁は武術以外、スポーツ、ボクシング、ボート、などオリンピック競技にも応用可能で、驚くべき成績を上げることができる。