ドクター尤外伝

ドクター尤の逸話は、私がたくさん聞いている。私がたくさんな逸話の中で最初に思い出すのは、太極拳をしている温厚な老年中国人から聞いた話である。彼が実際に見ていることである。

ある日、高い台の上に二枚の皿を足幅くらいに離して置いて、ハッと気合いをかけて飛び上がると左右の足がそれぞれの皿の上に載っていた、皿は割れていない、と言う。当時、ドクター尤の歳は八十を超えていた。と言う話であった。伝説である。私一人がこの話を聞いているので、このまま埋もれさすのは勿体無いと思い、共有している。二つ目の話は、私の先輩老年中国人女性から聞いた。練習の時にこの女性はあまり受け身が得意ではなく、師母が勁で彼女を投げた時にドクター尤は椅子に座っていたが、彼女の頭が床に後ろ向きに倒れて後頭部を思い切りぶつけそうになった刹那、椅子からサッと立ち上がり、ドクター尤の手が後頭部を支えていたと言うのだ。中国人老女は老人で身体の大きいドクター尤がとても敏捷で、この老女は大ケガをドクター尤が助けてくれた、と喜び、感心していた。また彼女は一度ドクター尤がズボンの裾をめくって膝から下の脚の筋肉を見せてくれたと言う。見えた脚の筋肉はまるで四角い木材のようで、鋼鉄のごとく硬かったと言った。最後に、師母が私に言ったことである。私の脚の筋肉が大分ついてきた頃に、私の脚を触りながら、ドクター尤の筋肉はもっとあったが、脚の前面大腿四頭筋だけ大きく、後ろ側の大腿二頭筋には全く無かったと言うのであった。今、私の筋肉のつき方も同じようで、私の修行は正しかったのだと思うのである。