上虚下実

このブログでも私のホームページでも、何回も説明して来ているのであるが、私は尤氏長寿養生功の訓練の目標は身体が上虚下実になることだ、と思っている。相撲の横綱がどんな相手が来ようと、最初の体当たりを自分の胸で受け止めて相撲のワザのやりとりが始まるように、岩山のような下半身を作り上げ、大きなお腹、太い脚、その巨大な下半身に比べれば、筋肉はそれほど上半身にはついていない。私が尤氏長寿養生功の修行を終えて、日本に帰国する時までには私の身体は修行が始まった頃とは全く違うものになっていた。大腿四頭筋はビックリするほど大きくなって、鏡を見ると乗馬ズボンを履いたように大腿四頭筋の外側が外にせり出て、筋肉を締めると、まるで堅い材木か鉄を思わすほどの堅さになっていた。チカラを抜いてリラックスさせると、まるで、マシュマロか、綿を思わすほどの柔らかさであった。今はこの五年ほど左脚が悪く、左脚の筋肉を鍛えていないので、右脚に比べると左脚は大分細くはなってしまったが、氣のエネルギーは脚が悪くなる前よりも強くなっている感覚がする。なんとも不思議で、異様な感じである。私の世界では、毎日の氣の感覚はいつも未体験の領域で、体験したものを一つ一つ足して組みあわせて新しい氣の世界にワザを作り上げている最中なのだ。そして、次の領域は何があるのか分からない。相撲でも一番一番の勝負の立会いの中で、自分の身体が反応して終わったら、身体が勝手に動いて勝っていたということがあるように氣功武術の世界でも同じことが起きている。上虚下実はこの氣功と相撲以外のスポーツにも当てはまる。スポーツでチャンピオンになった者の言葉を聴くのが好きで、良く注意して聴くのだが、共通した点が多く見られる。上半身がリラックスしていないとチャンピオンにはなれない。例えば、柔道、レスリング、レガッタ、フェンシングなど上虚下実になって優勝することが多い。東京オリンピックを控えてテレビにアスリートが出てくるものを全てチェックしてその共通点を探しているのであるが、私は確信している。上虚下実は人間肉体活動の共通の到達点であることを教えてくれる。