克己心

どんな分野でもそうであろうが初心者のうちには苦しみがある。達人の域に到達しようとすれば、自己べストを打破ろうとする時には、必ず、苦しみが伴う。私の場合もそうであった。肉体的に苦しんだだけでなく、ほかにも苦しみはあった。経済的な問題、延々と続く修練、良い歳をして下積みでいつまで経っても上級の訓練とワザは教えてくれない。たまにヤケを起こして海外に出た。もっぱら私のワザの練習は外国の武道家とスポーツ選手とのぶっつけ本番だった。今思い出すと笑ってしまうマンガのような結果になっていた。勝負や勝敗を他人としているうちは武術武道のレベルは低く、人生における様々な試練に打ち勝つこと, すなわち己れに克つことが最終的に求められる。良く武術武道の世界では、人を見ればオレが強い、あいつが弱い、と狭い世界で競争比較する者が多い。私が尤氏長寿養生功から学んだことは真の勝利者は健康で長寿を全うした者であると言うことだった。健康長寿を全うする為にも己れの怠惰な心に打ち克ち食体想を正さねばならない。ワザよりココ ロと言うことであろう。他人に勝つのではなくて己に克つと云うことである。尤氏長寿養生功は昔、殺人の拳だったものから活人の拳へと進化した。そしてチベット密教の影響を受けた瞑想主体の健康法となった今、他人と争うことなどはないのである。争う対象は自己の内面に存在する傲慢怠惰自己顕示欲などの醜いココロだろう。