彼我一体

究極の武術の境地を、以前にこの短い言葉で私は現したのである。絶対平和であるとか、愛であるとか、その武術の特徴を表す言葉で表現するのだろうが、私が三十年の尤氏長寿養生功に携わって得た私個人の体験的な感覚から身体の内側から出て来た言葉である。文字通り、我と彼が一体になり、私の意念が彼に伝わる空勁を体験した者が感覚的に感じるものなのである。もっと深く説明すると、空勁を何回も連続して打たれると、脳から幸せホルモンが放出されて、恍惚感に包まれて、笑いが止まらない。自然に顔に笑みが浮かんで、喜びの感情がピークに達して、勝手に笑ってその時間が楽しくて、楽しくて、たまらない。ある者は赤ン坊が高い、高い、をされている感覚になる、と言い、あまり楽しくて我を忘れてあちこち転げ回っている。私は私で、大声で笑って止まらない。そこには絶対平和に包まれて、愛に満ち溢れている。傍目で見ている者もつられて笑ってしまうだろう。東洋医学には陰陽五行説という古代哲学の考え方があって、木、火、土、金、水の要素がそれぞれの実相を表して木は肝臓、火は心臓、土が脾臓、金は肺臓、水が腎臓を支配するというようにそれぞれにグループを作り、色にも五色があり、穀物も五種に区別されて、東洋医学の基本的な考え方になっている。もし心や感情にグループが別れるとすると、笑いは心臓に帰属して、健康に大いに寄与する人間の感情で、現代の最新医学でも、笑いのある生活が人間を健康にして免疫を高めて、長寿になると言われている。逆に緊張して不幸せな生活をすれば、アドレナリンが放出されて、血管をボロボロにして短命に終わることも解明されている。だから、彼我一体となって、みんなで笑えば、健康で長寿になると言って良い。これが、私が武術の究極の境地であると結論付けた理由である。空勁は尤氏長寿養生功の最高の技術、ワザであって、心を根本から感動させて、心から喜び、笑いが止まらない。一回でも、私と、氣の交流をすれば、誰でも感じるものなのである。彼我一体こそは人間を最高に幸せにする手段である、と私は私の体験から断言出来るのである。究極の武術の境地は人間が幸せになる手段でもあった。