ドクター尤の逸話

これは私が師母から直接聞いたり、ドクター尤老師に直接習った中国人先輩道場生から聞いたドクター尤老師の逸話である。みんな真面目で真剣な方たちなので、大げさな表現やウソではないことを最初に断わって置く。スタンフォード大学の物理学の教授であるリー博士が太極拳を学んでいて、勁空勁のワザに興味を持ち、サンフランシスコはチャイナタウンで太極拳を教えていた老人に中国で勁空勁を本当に出来る中国人は誰だろう?と聞いたところ、中国広しと言えども、本当の勁空勁を出来るのはただ一人尤膨煕しかいない、と言って、リー博士が中国に行って調べたところ、上海に住んでいることが分かったと言う。そこで、リー博士が上海に行って、文革で拷問を受けた中国に嫌気を感じていたドクター尤夫妻を香港経由でアメリカはサンフランシスコに亡命させることに成功した。亡命後はリー博士の家に住んでいた。ある日、リー博士の娘さんを膝の上に乗せていたドクター尤老師が遊びで娘さんと一緒に遠く離れた窓のカーテンを開けたり閉めたりしていた、と言うのである。これは超能力で言う物体移動、サイコキネスである。私が日本に帰国してテレビに超能力者と会わせられて、超能力者を空勁で投げられるか?投げたらどんな反応をするか実験すると言うので、投げたところ、彼ら全員が氣には超敏感人間であることが分かった。その中の何人かは物体移動が出来たそうである。私は見たことはないが、投げた中のいわゆる超能力者はスプーン曲げをするテレビに何度も出て有名になった超能力者で、名前を言ったら、知っている人もいるかもしれない。話を戻して、ドクター尤の氣はとっても氣が密になっていたので、遠く離れた物体を動かすことが出来ていたのであろう。また、これは太極拳を訓練する老中国人が見たものを私に言ったことである。ある日、ドクター尤老師が自分の訓練で、家の庭に出る階段を全速力で駆け登ったり駆け降りたりしていたのを見た。そして別の日、自分の背丈ほどある台の上に二つの陶器の茶碗を置いてハッと掛け声をかけてジャンプして茶碗の上に飛び乗ったと言う。茶碗は割れなかった。これは中国の軽身功である。当時、ドクター尤老師は100キロを超す巨体で、八十歳を超えていたと言う。信じられない話であるが、大真面目に話すのにつられて私はひと言も言えずに黙ったまま聴くしかない。また、ある時には私の仲の良い中国人先輩がドクター尤老師と師母と一緒に住んで二人の世話をしていたのであったが、ドクター尤老師が亡くなられた後にドクター尤老師のマットも無い木製のベッドで寝ていたら、夜中に、周りに気配を感じ、音がしたり物が動いたりしたので、大変恐くなって、毛布をしっかり被って寝て、起きることが出来無かったと言うのである。続けて、ドクター尤の生前に自分のアパートを持って住んでいた時のことである。ある晩、寝ていたところ、真夜中に「 Wing,Wing, 」と何回も呼ぶ声が聞こえて 寝られなくなって、起きて瞑想を始めたと言う。翌日、練習に行って、ドクター尤にそのことを話すと、ドクター尤が「あ、それは俺がお前を起こして一緒に瞑想しようと言っていたんだ」当時ドクター尤は眠らずに夜中に一晩中瞑想していたのだ、と彼は言っている。チベット密教の高僧は夜に寝ないで瞑想だけすると言われている。瞑想すると睡眠以上に脳や身体が休むことが出来ると言われている。私もついこのあいだにインドでチベット密教を修行する人から高僧が夜一晩中瞑想すると言う話を聞いていた。私も最近は夜眠ることに執着しなくなっている。寝たい時に寝て、起きたいときに起きる、リタイアした者の特権である。このドクター尤老師が行なっていたことは超人的で、とても人間ワザには思えない。私には生きているあいだには出来ることもないが、ドクター尤の逸話は何時も私を勇気づけて、尤氏長寿養生功を教授することに大きな勇気と自信、そして誇りを与えてくれるのである。