忘れられた杖

腰痛の患者は多い。鍼灸で腰痛の患者を初回の治療で治せるようになったら、一人前の鍼灸師と言えるだろう。他にも違う主訴を訴える患者ももちろんいるが、這うようにして来院する患者が治療後歩いて帰れば、痛みに対処できる鍼灸師であると言える。特にギックリ腰の患者はチョット動いただけで大の男が悲鳴をあげる。こちらもその痛みにつられて動揺することもある。初回の治療で痛みが消失せねばならない。私のクリニックで面白いことがあった。電話があり、先生、またやっちゃったー。と言って松葉杖で来院した。前に一度往診を依頼されて整体整骨で完治した。常習のギックリ腰患者である。その治療を覚えていて、鍼は嫌いだから鍼を打たないでボキボキッとやって治してくれ!と言って子どものようにダダをこねる心優しく口の減らないおばちゃん患者だった。今朝やってしまったと言うから炎症のあるうちには整骨出来ないので鍼を打って炎症を抑えてからボキボキしようと言っても頷かない。説得して鍼を打って様子を見てから、立って歩ってください、と言ったらさっきまで歩けないんだから出来ない。と言うので、だったら座ってくださいと言ったらもう座っていて、あら、座れた!ということで痛みは消失していた。私のクリニックの通りの向かい側に止めた車まで走って帰って行ってしまった。フト見れば、松葉杖を忘れていったのだった。腰痛は身体の内側に問題のある時があり、油断は出来ないのであるが、ギックリ腰のように構造的な問題が原因の腰痛は恐れることはない。相当にひどい腰痛も初回で改善して、完治することもある。いわゆる、即効性のある治療、即治と言うのが、東洋医学には数多く起こるのである。尤氏長寿養生功を修練して氣が出るようになると鍼も整骨整体も要らなくなって氣とストレッチ体操だけでもその場で完治させることが可能になる。