中医

日本人には馴染みの無い中医ということはアメリカで鍼灸のライセンスを取得する時には中国医学中医と言う資格を取得せねばならない。とても難しい試験がある。鍼灸だけを学び鍼灸師の国家資格を取得する日本と違って、漢方も学ぶことになる。鍼灸漢方薬の両方を隅から隅まで習わないといけない。州ごとに試験の難易度が違い、カリフォルニア州の試験が一番難しいとされて、一回で合格することはない。たくさんの浪人生がいた。当然毎年受験生が多く、合格率は低い。英語と中国語の両方を使う試験で、どっちで答えても良いことになっている。私は英語で受けたが、漢方薬の試験には中国語で答えた。漢字は日本人にとってお手のものである。私はラッキーにも一回目で合格した。アメリカ人は漢方薬ラテン語で覚えていた者もいたが、漢方薬を中国語で覚えた方が先生やサンフランシスコのチャイナタウンの漢方薬局では話しが通じ易い。私は試験の前に全ての漢方薬を一つ一つ煎じて飲んで、味を覚えたものである。鍼灸の講座は私の知識欲を満たしてくれた。講座の中には中国で勉強した中医の先生が講義して、内容も今まで聞いたことも無いものであった。例えば、近視を治してしまう秘密の鍼のツボとか、ガンを治してしまう秘密の漢方とか、白髪三千丈的な荒唐無稽なものであったが、なかなか興味深いものではあった。かと言って、ウソやマヤカシの医術医療ではない。中国の中医は西洋医学も同時に勉強する。医師であって、鍼灸師でもある。世界保健機関で、西洋医学と共に同じ医療として現在、認められている、法律で定められた医療の一環である。アメリカでは、中医鍼灸師はプライマリーの医師としての資格も与えられている。保険も今では鍼治療をカバーしている。鍼の威力は絶大で、痛みだけを治すだけでなく、内科的な慢性化した内臓の疾患も治ることが知られているので、将来、西洋医学の内科の医師が要らなくなって行くだろうと予測されている。保険会社も鍼治療の方が安価なので、鍼灸の治療を保険でカバーしているのである。アメリカ人の鍼灸師は保険の請求が上手で、患者を良く集めている。私がタヒチに行くと島のドクター達に敬遠されて問題になると言って、私を呼んでいる者たちが気を回して、今ではタヒチの大統領にまで、声をかけて、私の技能をタヒチの島に活かす特別な文化的なビザを発行してもらうよう尽力してくれている。ありがたいことである。タヒチに於いても中医の勉強をした私がタヒチの人々の痛みや慢性化した内科的問題を抱えた患者を治療することとなるだろう。ひょっとして、タヒチの大統領が私の患者となる可能性もなきにしもあらずである。すでにタヒチの教育大臣であったタヒチアンが私の患者となっている。