日本敗退

もう一度南アフリカを破ることができるのではないかとみんなが期待を込めて見ていたのであったけども、善戦虚しく、決勝戦には残れなかった。あれほどの大敗したラグビー弱小国日本が四戦全勝して南アフリカとの再戦をして勝利することを願うばかりであったが、残念なことである。ラグビーは陣取りゲームと言われて一歩でも前に進む男のスポーツである。何があっても前に進む武術が意拳である。身体の大きな相手が突進するのに対してこちらが前に出ることは恐怖である。私はサンフランシスコの練習でも、武者修行で私のワザを海外の国で試した時にも、一歩前に出て相手を押すことは勇気の要ることであった。相手の額が私の鼻を直撃して、鼻血がドバーッと出たこともあった。私の倍のサイズの会ったこともない、話したこともない武術家やスポーツ選手に正対して押し返すことは至難のワザで、恐怖感が伴なうものである。尋常な勇気ではない勇気が要る。勇気はこういう体験を通して作られて行く。失敗の許されない、テレビの生番組のブッツケ本番の時にも総合格闘家や、身体の大きなスポーツ選手と対戦させられる設定で相手をさせられる。成功率はそれでも、70パーセントであった。三十年前には勁空勁のワザは完成していなかった。それから、毎日、毎日、初対面の相手をどのようにすれば、触れずに投げ飛ばすことができるだろうか?とそればかり考えていた。気づいたことがあった。相手の氣とこちらの氣がコネクト、繋がりが無ければ、氣功の世界では何も起こることはない、と分かったのである。この問題をどう解決すれば良いのか、寝ないで考えた日もある。患者を治療する時も、身体の大きなスポーツ選手と武術家を投げ飛ばすことは、同じ次元、同じ内容であることをついに理解できたのである。それ以来、相手に両手を煙が出るほどこすってもらった後に私の氣を感じてもらうと相手との空勁が可能となる発見をしたのである。講習会での初対面者との勁空勁が百パーセントになったのはこの後であった。私の夢であった私だけの世界はこうして作られた。