幻肢痛、ファントムペイン

Phantom  Pain  は珍しく、不思議な病いである。たった一度だけファントムペインの患者を診たことがある。どういうものかと言えば、事故などで四肢のひとつを切断した人が、無いはずの腕や脚に痛みを感じる病いである。私の友人の知り合いが仕事中に事故で腕を無くした後に無いはずの腕に痛みを感じて医者に行き、治療の施しようが無くて、私に紹介されて来た。いわゆる労災であるから保険が効く。この治療は興味深いものであった。いつもののように両手を擦り合わせて氣を感じるか聞くわけにいかない。隻腕となった腕は氣を感じるので、治療は可能性があると伝えて治療は始まる。耳に置鍼して様子を見ると痛みが半減したと言う。面白い治療を考えついて、無いはずの腕に鍼を刺す。もちろん実物の腕は無い。マネだけである。何か感じると言う。保険が効くので、十二回ほどの治療で痛みが消えた。結果を患者から聞いた医師は鍼灸の幅広い治療範囲に驚いていた。アメリカの四大テレビ局のひとつにドキュメンタリーで鍼灸治療が取り上げられて、鍼灸が痛みだけでなく、慢性化した内臓の病氣にも効果があることを報告して、アメリカで鍼灸ブームが起こった。今では、ガンにも中医学の漢方と鍼灸が効果があることが喧伝されて鍼灸アメリカ市民に浸透している。最近では、保険もカバーするようになっている。私がライセンスを取得した頃に比べれば、時代が進んでいるようである。医学には西洋も東洋も無い。必要なことは医学的に効果があるか無いかということである。