勁と空勁

すでに知っているように勁は相手を武術的に制する、氣を使ったチカラのことである。脚と腰のチカラを腕と手に伝えて相手にその下半身のチカラを伝える伝達力とも言えるだろう。日本の武道では合気道がこの勁を使うものである。一方で空勁は、勁を習得した後に出来るものであるが、身体の外に氣が出るようになって初めて出来るようになる技術である。別名古くは、綾空術とも言われた。

意拳より神拳の尤と称された、ものドクター尤老師によって意拳の勁から空勁に昇華したものが近代中国武術で一番有名である。空勁は純粋に氣のみを使うことから医術、医療にも使えるものなのだ。ドクター尤老師は1930年代にドイツ留学後に上海で皮膚科のドクターとして、当時大流行していた性病の梅毒の治療を西洋のクスリと漢方薬と氣功を使い、医師としての名声を欲しいままにして一躍有名になったのである。このことからも分かるように空勁の氣と医療に用いられる氣は同じものである。空勁ができることになると、医術としてもそのチカラを発揮する。すなわち空勁が出来れば出来るほど奇跡的な医療効果が期待できる。

脳梗塞後遺症の患者を即座に歩かせて上がらない腕もその場ですぐに上げることが出来た。この動画を見ると理解できるように、武術としての空勁は医療に効果がある氣は同じものであった。宇宙のエネルギーのように破壊と創生の両極のエネルギーが人間にも存在して破壊的な武術としての空勁と再生のエネルギーを人間の心で選択して使い分ける。破壊も創生再生は同じものであった。