気絶

患者の中には、針に恐怖心があって、鍼を打った後に意識を失ってしまう患者がいる。アメリカで一度経験した後にタヒチでもまた経験した。アメリカの患者は私の一点五倍くらいもある大男で、タヒチの患者は女性であったが、同じように女丈夫の巨人であった。この女性は首の手術後首の骨をボルトで固定した鉄板が邪魔して片方だけに顔を回せるのだが、逆側には回せないのだ、と言う。助けられるかどうか分からない難しいケースであったが、タヒチアンが全員氣には敏感であることを頼りにして治療を始めた。回らない方の腕にあるツボ、外関と言うツボに一本だけ鍼を打った後に強い刺激を与えたら、気絶していた。さあ大変、と思って、身体は巨人で180センチ以上はあったと思う。ほっぺたをバシバシ叩いて意識を取り戻す。起き上がってから、どう?回すことができる?と言ったら、もう回していた。即治したのである。氣が一度に流れ始めたので身体がショックを受けたのであったのだろうか?

どっちにしろ、治るまでのプロセスで、漢方でも同じように漢方を飲んだ後にもっと悪くなったような症状が出る場合がある。これを東洋医学では、めんげんと言っている。決して悪い現象ではないから心配しなくて良い。そしてこれは即治の前触れ、早く治る兆候でもある。体内で氣が一度に流れることに身体がついて来れない時の人間の自然な反応ではないか?と思われる。それからの私は気絶しても、慌てることなく、むしろ良いサインとしてこの鍼灸時の気絶を観るようになった。