専門バカ

三十年ものあいだ、社会と隔絶した生活を送って氣の世界に浸って生きて来た私は専門バカで、毎日見る顔は師母と私の患者と道場生しかない。日本に帰国してからも手術後のリハビリと道場生の付き合いしかない。氣の世界以外、何も知らない。ただ師母の教えだけに注意が向いて他のことはどうでも良い。だから、世間では、私が奇人変人に見えるだろう。これではいけない、と思い遅まきながら、他の分野も勉強している最中ではあるが、間に合わない。私の歳を考えると遅すぎたのであろうか?言い訳になってしまうが、師母の教え方は、道場生同士互いに競争させて上達させるやり方で人間の限界に挑んだせいで私の膝は限界を越えて壊れてしまった。その競争に打ち勝って、今の私がある。それが間違いであったとは思わないが、あまり器用ではない私の性格では尤氏長寿養生功に特化した三十年を過ごして来たのであった。オールラウンドには氣を配れなかった。しかしそれでは社会で生きては行けないので、バカにならぬようにこれからの人生を生きようと大いに反省している。