健康長寿

人生において、何が一番重要かと言って、健康と長寿以外に何があるのか?と言って私を諭して納得させた人が私の尤氏長寿養生功の師、欧陽敏師母であった。ある日、練習の合間にこの世で一番大切なものは何であると思う?と急に神妙になって、我々に聞くのである。言っていることが分かりながらも、いつものようにふざけて、師母、それはお金でしょうね、と言ってやると、バーカ、違う!私を見ろ!こんなに歳をとっても元気でお前たちを投げてるではないか?この世で最も大切なものは Longevity  だ、と力説するのであった。それから師母が他界して今になって、私が尤氏長寿養生功を教授する立場になった私も同じことを練習の合間に言っている。こうして師母の同じ言葉を繰り返している。伝統のワザと共に心と言葉も受け継ぐのである。今になって、歳をとって、思い返すとさまざまな記憶が蘇る。辛い、とてつもなく、辛い修行、時々は師母を恨みたくなるほどにメタクソに痛めつけられたものであるが、今になれば、それほどにやられなければ、私のようなチャランポランで怠け者はさっさと辞めていただろうと思う。百五十年も前からの武術家の生き残りが武術の基礎訓練を教えれば、このようになるのであろう。良い経験であった。現代の人間が決して経験出来ないことを私一人が経験して、唯一人の日本人として尤氏長寿養生功を継承する。宝くじに当たるより確率は低い。健康長寿は億万長者であっても達成することは難しい。尤氏長寿養生功の伝える智慧とワザを身につけている私は、ある意味、億万長者よりもたくさんな貴重なモノを持っているという自覚を今この歳になって持って、心豊かに、楽しく嬉しい幸せな人生を送っている。