日本に二十二年、アメリカに四十三年、日本でも、アメリカでも私は情を持つ人の縁によって、助けによって、生きて

来た。情は人間関係の潤滑油である。

そして人生を前に進む原動力になって、

大きく影響を受ける時もある。尤氏意拳の神田真澄こと姜吉隆に今度は私が情を持って、接したのであったが、その情に仇するように私は利用された。情に感謝出来ぬ者は何も手に入れられない。

心は冷たく、自己の利己的な夢ばかり追って、しかもその夢と言うのは、カネ、名声と自己顕示で、

つまらない人物である。情のキャッチボールが出来ない。氷のような心で他人と対応する。たとえ、一時期でも情によって助けられたならば、情によって返すべきではないか?

渡したカネを返せとは言わなかった。母親がかわいそうであった。歳老いて、受験に失敗ばかりする息子を二人も持っている老女を私は見てはいられなかった。それでも自分のワガママを通す。ハッキリ指摘すると逆切れする。情を知らぬ人生は色のない虹のようなものだ。