コツ其の三

我々のこの類まれな勁空勁のもう一つの大特色は、勁空勁時に、飛ばされる側はジャンプをするのである。このジャンプは、太極拳の震脚と言うのがあるが、震脚は片足でするものであるが、我々のジャンプは両足である。私がジャンプする前に先輩のジャンプを見るばかりで、結構長い間していたけども、いざ自分がジャンプを許されて、飛んでみると、たった数回で息が上がってしまい長く続けられない。ボロクソにお前の脚は弱すぎると罵倒されて、やっとその意味が分かる。リラックスしないと師母の氣は受けられない。強い脚の筋肉で踏ん張らないとジャンプは出来ない。リラックスとジャンプ、陰と陽である。この陰と陽の絶妙のタイミングとバランスをうまく使い、出来るだけ長くジャンプを続けるのである。この辛くて楽しい修行を数年間続けると身体に変化が現れる。下半身は相撲取りのお相撲さんのように、競輪の選手のように筋肉が勝手について、銭湯に行くと、同年輩のおじさん達が驚いてジロジロ見てしまう。短パンを履くとウェートトレーニングでもやってるんですか?と聞かれるくらいになる。そのくらいになると、風邪を引いてもスグ治るし、体調は健康人のそれを超えて超絶好調になって、気力体力は常人を超えてしまう。肌はツルツル、スベスベになって赤ン坊のようだ。一方上半身には筋肉は余り、ついてはいない。いわゆる一流武術家特有の上虚下実になるのだ。私は三十年ほど毎日二回師母と一対一のマンツーマンでこのジャンプの修行をしたのであったが、他の先輩と同輩は誰も私と同じ修練はしていない。過酷で辛くて、楽しい修行であった。毎回のジャンプの中に大きく気づくことがたくさんあった。瞑想とジャンプ、他の武術にはない独特な尤氏長寿養生功の修行法である。現在の太田氣功道場では一日も早く勁空勁を出来るように新規の道場生を教育するので私が習った当時に比べてずっともっと早く勁空勁が出来るようになっている。だから、習うならば、今である。