市民権

アメリカに住みたい人間は多い。

しかし外国人にとって、住むには永住権が要る。永住権を求めて世界各国から人は殺到する。私が渡米した頃は永住権は比較的簡単に取れた。人口を増やす為に国々の移民の枠が決められて技術者や特殊技能を持つ者を優先的に選んでいた。

武術を教えるといっても、日本の武道団体が永住権を用意してくれる訳はない。

以前教えていた先生が辞めて、私に白羽の矢が立った。なんの準備もない。

相当の年月が流れて弁護士と私だけで永住権申請の準備をして、ついに永住権は降りた。申請に関して余りの法律の煩雑さに道場生の皆が諦めて、私自身でするしかなかった。他に後輩の永住権も取ってあげた私は移民と永住権申請に関してはエキスパートと今は自負している。

二度目の結婚では妻に永住権の取得は法律改正で難しくなって、私は市民権を取得してアメリカ国籍となった。妻も永住権を取り、アメリカに妻も合法的に住むことになって喜んだ。日本帰国の際は

私の戸籍は残っていないものと思っていた。てっきりアメリカ国籍だけと思っていたが、二重国籍だった。よく調べたら、実家に戸籍が残っていた。二重国籍は違法となっている。危なく入管に捕まるところだった。おかげで身体障害者手帳も手に入れた。今は日本国民である。