ウソ❸ 秘密のノック

我々尤氏長寿養生功のサンフランシスコの道場では、師母が外部からの部外者が道場にコッソリ来て、いろいろと探っていくのを嫌い、家のガレージを道場にして、道場に入る際にはガレージのドアをノックしてから、名前を聞いて道場生だけ入れるシステムになっていた。特に中国共産党から拷問を受けた師母は中国政府を信用していなかった。ドクター尤と一緒に腰まで浸かる水攻めでお二人とも、その拷問で後遺症も持っていたのである。そこまで新しく入って来る人間を警戒していた。神田真澄こと姜吉隆が単身一人で何の紹介無しに師母の道場に入門することは出来ない。苦肉の索で、私の息子と紹介して初めて面会してくれたのであった。単身自分一人でアメリカに渡り、師母の訓練を受けた事実などあるはずがない。師母に会うことすら出来ない。こんな秘密のノックのことまで知っているのは私だけで、姜吉隆自身は知る由も無い。あまりにウソをつくと、後でバレてしまう。「天網恢々疎にして漏らさず」。