推手Push-Hand

中国武術映画で見たことのある人がいると思うが、中国の内家拳に於いては、相手の技量を測る時や、実際に勝負を決める時にはこの推手をして勝敗を決するのである。意拳の王向斉老師は特に推手が得意な方で、さまざまなエピソードがある。全ての逸話伝説をここに書くことは出来ない。私が聴いた話では、手首を合わせて、押したり 押し返したりした後に王向斉老師が手を一閃させると相手の挑戦者が空中を飛び、壁にぶちあたって、まるで、ハエのように、壁に潰されてズルズルと壁を伝って床にドスンと落ちてしまった、と言うのを王向斉老師の弟子達が目撃している。その中の一人がドクター尤老師でもあった。信じられない話であるが、私が尤氏長寿養生功の勁空勁を学んだ後に大阪の私の道場で起こった全ての氣を使って起こった現象を検証してみると、この話は事実であって、実際に起こったことであると確信している。氣を極限にまで高めると自分でも信じることが出来ない現象が起きる。私の三十年に及ぶ毎日の修行で七百二十万回の震脚と四万四千四百四十時間の瞑想であっても、普通では起こり得ない現象が起きているのに、百年ほど前に訓練している老師たちは、もちろん私以上の才能を以って、私以上の努力精進の後に出来たチカラは私が及ぶはずもない、私が見たこともないレベルの氣の現象を現すことが出来たと思うのである。おそらくは受け身の取れないほどの勁空勁で投げ飛ばされていたと思われる。あまりなチカラの勁で投げられる弟子たちは骨折や大ケガで生傷が絶えなかった、

と聞いている。太田氣功道場では、養生功と言っても、この武術的な推手も盛んに行なっている。相手の動きと攻撃の瞬間の氣の動きを察知するに有効な手段であるからである。手首からの相手の氣の動きを感覚で察知することを勁を聴く、聴勁と言う。師母も良く私に推手の訓練を授けてくれたものである。私はいつも吹っ飛ばされた。