風格

師母は我々道場生をシャオフー、小虎と呼んでいた。中国の武術の師が弟子を呼ぶ時に小虎シャオフーと呼ぶことが昔からの中国武術の世界の慣習であった。日本人である私にはその響きは心地良く、師匠としての師母に伝統的な風格を感じたものである。今でも私の耳には私をシャオフー、小虎と呼ぶその響きが残っている。とても懐かしい。私の力量では師母と同じ風格は望むことなどもちろんできないのは分かっている。それでも、勁空勁のワザに瞼に浮かぶ師母のワザに少しずつでも近づくように努力している。師母の風格は、そしてドクター尤老師の風格は日本の武術家の師範とは比べることが出来ないほどの貫禄があった。ただ歳が高齢になっただけの雰囲気があるだけの風格では無い。磨きに磨かれた、どんな武術家にも真似の出来ないものである。今でも私の先輩と尤氏長寿養生功の話のなれば彼らがドクター尤老師から直接習っているので、彼らの中の生きる指針となるドクター尤老師の言葉が出て来る。師母であっても、ドクター尤老師はこう言っていた、と言う話は毎日言っていた。ドクター尤老師を頂点にして秩序と統一がとれていた。私の胸の中ではドクター尤老師も師母はまだ生きている。小虎、シャオフーと私を呼んだその響きと風格は私が忘れることは私の死を迎えるまでありえないだろう。尤氏長寿養生功がホンモノで、ホンモノの風格であった。