推手

中国武術太極拳には推手と言って、相手の手首尺骨の骨頭と小指側の手首の間の部分を接触させて押し合い、相手を跳ね飛ばすワザがある。傍目には良く分からず、良く見えることはないが、やってみると非常に難しい、足腰が良く 練られて氣が充分に蓄えられていないとなかなかに難しい、奥の深いものであることが分かる。ただのチカラの押し合いで無いのが、すぐに理解出来るはずだ。当然意拳, 尤氏長寿養生功にもある。 意拳の推手には単手と双手二種類があり、尤氏長寿養生功では盛んに行われている。映画でも良く見る推手であるが、相手の技倆と実力がこの手合わせをするといっぺんに分かってしまうものである。手首と肩の力を抜き、脚と腰のチカラを腕に伝えて、相手を跳ね飛ばすワザとなるものである。簡単に言ってしまえば、ただそれだけのことではあるが、そのレベルに至るまでに相当な修行の時間が必要である。尤氏長寿養生功の推手では、単に押し勝つだけでなく、相手を空中に跳ね飛ばすことになる。とても人間ワザと思われぬほどの氣のチカラを体験することとなる。ある程度のチカラのついた道場生とは、私は盛んに推手を行なう。今は左手首を骨折修復手術の後に手首を回転させられないので、片手の推手ではあるが、上級者ほど反応良く、空中へ吹っ飛んでしまう。講習会でも、氣を感じた者とは推手をして尤氏長寿養生功の氣のチカラを感じてもらっている。推手は中国内家拳の華であり、武術の奥義を伝えている伝統伝説のワザである。尤氏長寿養生功の前身の意拳の王向斎老師の推手は特に有名だ。さまざまな伝説がある。氣のチカラが強大で、相手が壁にぶつかり、ハエが壁に押しつぶされるようにズルズルとユックリ床に落ちてしまったとか、相手が空中に飛ばされて天井に頭が当たってから落ちて来たと言う逸話が残っている。ドクター尤老師もいろいろな逸話があり、私はドクター尤老師に習った先輩と師母からたくさんの逸話を聞いている。ドクター尤老師の場合、推手が勁のチカラであるのに、空勁のチカラで相手が吹っ飛んでしまう。今でも懐疑的な者がいるのに、当時はもっと激しく反応して、周りはカマビスかったに違いない。しかし、私は淡々とこの尤氏長寿養生功を紹介して、この独特な推手も同時にその伝承を伝えているのである。私には名誉、栄誉あることで、誇りを持って教えている。 何年もの修行のあとに推手を行なうものなのだが、今では、講習会で会った初心者にも推手を行なっている。